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五稜郭は、北海道函館市に位置する日本初の西洋式星形要塞で、幕末の動乱期に築かれた歴史的建造物です。江戸幕府は1854年の日米和親条約締結により箱館を開港し、外国勢力との交渉や防衛の必要性から、内陸の平坦地に新たな役所を設けることを決定しました。これにより、1866年に完成したのが五稜郭です。
設計は蘭学者の武田斐三郎が担当し、オランダのブールタンゲ要塞を参考にした星形の稜堡式構造が採用されました。この形状は、死角を減らし防御力を高めるためのもので、当時の最新の軍事技術が反映されています。
完成から間もなく幕府は崩壊し、五稜郭は戊辰戦争の最終局面である箱館戦争の舞台となりました。旧幕府軍の榎本武揚らが拠点とし、短期間ながら「蝦夷共和国」の政庁も置かれましたが、1869年に新政府軍により陥落しました。
その後、五稜郭は陸軍の練兵場として利用され、1914年からは公園として一般に開放されました。現在では約五千本の桜が植えられ、春には花見の名所として多くの観光客を魅了しています。また、五稜郭タワーからはその美しい星形の全景を一望でき、国の特別史跡にも指定されています。歴史と景観が融合した五稜郭は、今もなお多くの人々に親しまれています。